明倫館塾長ブログをご覧頂き誠にありがとうございます。明倫館塾長の永倉です。

生徒面談をしていると、こんな言葉を聞きます。「最近、なんかやる気が出ないんです」「勉強しなきゃと思うんですけど、手が止まっちゃって…」この時、指導者側がついやってしまいがちなのは、「いや、やる気の問題じゃないよ。まずは手を動かそう」
「そんなこと言ってたら、テストまで間に合わないぞ」という正論です。言っていることは間違っていないのですが、これでは相手の心には届かないことがあります。ここで効いてくるのが、バックトラッキングという技法です。

まず「繰り返す」だけでいい

バックトラッキングとは、相手の言葉を一度そのまま繰り返して受け止めることです。「最近やる気が出ないんです」と言われたら、「そっか、最近やる気が出ないんだね」と返します。たったこれだけなのですが、言われた側は「この先生、ちゃんと聞いてくれているな」と感じます。人は、自分の気持ちをそのまま言葉にしてもらうと安心する生き物です。アドバイスより先に、まず分かってもらえたという感覚が欲しいのです。

受け止めてから、そっと方向づける

もちろん、共感だけで終わらせてしまっては指導にはなりません。大事なのは順番です。①まず、相手の言葉を繰り返して受け止める②そのあとで、ゆっくり方向を示す。

たとえば、「最近やる気が出ないんです」→「そうか、やる気が出なくてしんどいんだね」→「それでもここに来てくれているのはエライよ。じゃあ、やる気がなくてもできそうな一歩を一緒に決めてみようか」この流れなら、相手は心のブレーキを握ったままではなく、一緒に前を向く準備ができます。人は理解されたと感じたときにだけ、助言を受け入れられるのです。これは現場で何度も感じてきた事実です。

教育は、説得ではなく「共感」から

指導者の仕事は、正しいことを一方的に伝えることではありません。相手の心の位置を確かめながら、一緒に前へ進む方向を探していくことだと思います。そのスタート地点にあるのが、バックトラッキングという小さな一歩です。相手の言葉を、そのまま返してみる。ただそれだけで、固く閉じていた心の扉が、ほんの少し、静かに開き始めます。明倫館の教室でも、今日もまたひとつひとつの言葉を大事にしながら、生徒の皆さんと向き合っていきたいと思います。

最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

明倫館

塾長 永倉秀樹

TEL:054-204-3911(明倫館本部教室)

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