
こんにちは。鈴木です。
最近、野口聡一さんと大江麻理子さんの対談である『自分の弱さを知る』を読みました。
この本が面白いのは、互いが話されていることに頷いてばかりではなく、納得できないところは納得できないとはっきり大江さんがNOと言うことで、話が深掘りされている点にあります。
話を読み進めるにつれ、「明らかに大江さんは納得していない部分があるだろう…」というのがわかるのですが、それを不良消化にせず、大江さんも巻末でちゃんとそのことに触れていることから、対談ではあるのに、全体としてよくまとまっている内容となっているのが凄いと思います。野口さんが凄いのはもちろんのこと、大江さんの聴く力・質問力が本質をついていることが多く、対談全体の舵取りをされているような印象でした。そして、最後の大江さんのあとがきに泣けてきます。
話が面白くなってくる始めの段階で大江さんが仰っていたことがあります。
大学の授業で、「アイデンティティを何によって確立するかがとても重要だ」ということを教わったそうなのです。大江さんが何より心に残っているというのが、「アイデンティティというものは、普遍のものによって確立しないといけない」という話だと言います。変わるものと自分とを結びつけてアイデンティティを確立してしまうと、そちらが変わってしまったときに、自分を見失ってしまうというのです。
例えば、勉強に自分のアイデンティティ、自分の存在意義を見出してしまうと、それがうまくいかなくなったときに自分を見失う、ということでしょう。
ひとつのことに特化しすぎると、足元をすくわれやすくなる。
そのため、自分の存在意義をあらゆるものに見出しておくのもひとつなのでしょうが、大江さんの場合は、不変のものに結びつけているようです。
それは、死と自分とを結びつけてアイデンティティを確立することです。そうすれば、「死ぬまでに、自分がどう生きるか」ということを追求し続けることができる。
大江さんは今年テレビ東京を退社なされたそうですが、この対談で述べられている通り、仕事への執着はあまりないようです。あとがきには、大江さんが「死ぬまでに、自分がどう生きるか」を考えた末の話が書かれていますので、それまでの対談を通して読むと、胸が熱くなります。
改めて、「アイデンティティ、自分の存在意義を何によって確立するか」という話に戻りますが、人の生き方はそれぞれです。大江さんのこの考え方もそのひとつですが、大いに参考になるのではないでしょうか。こういった、生きていく上での前提は、日常生活全般、人生全般に関わることですから、その心の置き所を、この機会にじっくりと考えてみるのもよいのではないでしょうか。とくにこれから活躍していく若者たちにこそ、そういった時間をしっかりととっておいてもらいたいなと、老婆心ながらも感じている今日この頃です。

