と出会ったのは、旧教科書に採用されていた『少女ソフィアの夏』が初めてでした。マッペというかわいい名前の猫が出てくる物語です。

 正確には、幼少期にムーミンのアニメーションを見たのがトーベ・ヤンソン作品と出会った最初なのかもしれませんが、そのときは作者の名前を知る由もなく、「スナフキンカッコいい…」と思っていたくらいでした。どんな話かもわかっていなかったんじゃないかな(笑)。

 そのようにして、グッズなどのかわいいイラスト止まりであった私にとってのムーミンに最近、変化がありました。

 作品を読んでみたのです。

 印象に残ったのは、「目に見えない子」という話です。

 世話役のおばさんから毎日ひにくを言われ続けたニンニという女の子が、そのうち青ざめてしまい、だんだんと姿が見えなくなってしまうお話。

 また姿が見えるようにするには…と、ムーミン家へと連れてこられたニンニ。ムーミンパパがきわどいセリフ連発で、完全に終盤へのフリになっているのが面白い(笑)。

 そこで登場するのがムーミンママ。とにかくニンニに優しい(笑)。ママの優しさに、ニンニの姿もだんだんと見えるようになっていくのです。そして、ママに気持ちを許している感があるのも、終盤への伏線になっています。

 間、ミイというキャラクターがニンニに、「あんた、ぶたみたいによくねてたわね」と挑発(爆笑)。ムーミンはキャラクターの個性が際立っているようです。このミイも、ニンニに「たたかうってことをおぼえないうちは、あんたには自分の顔はもてません」というきついセリフを投げかけるのですが、それも終盤への伏線になっているのです。

 そうして物語の終盤、ムーミンママにちょっかいを出そうとしたムーミンパパのしっぽに、ニンニがかみつくという事態が起こります。そして、初めて怒りの感情をあらわにした瞬間、ニンニの姿は完全に見えるようになりました。ムーミンパパはぶつぶつニンニの悪口を言うのですが、バチが当たったのか、ひっくりかえって海へ落ちてしまい、耳に泥がついたまま海面から姿をあらわします。それを見て笑っているニンニ。トーベ・ヤンソン本人が描いている挿絵にとてもあたたかみがあり、印象的なシーンとなっています。

 このように「目に見えない子」では、ムーミン家のメンバーが、それぞれの個性でニンニに関わり、ニンニを変えていく様子が描かれた秀逸な作品となっています。初めてムーミンの話を読みましたが、確かに面白い! 短編集なので、読みやすくていいですね。

 みなさんも、ぜひ読んでみてください。

 ニンニの話は、この表紙の短編集(『ムーミン谷の仲間たち』)に収録されています。