ばかりを繕う人生を送っていました。本はその最たるもので、大学の先生が「これは名著です」というものを購入しては机に積み上げ、偉くなったような気がしていたものです。何が大切なことか全くわかっておりませんでした。

 しかし、人にはタイミングというものもあるかもしれないな、とも感じます。

 例えば、上記のように購入した一冊に『孤独な群衆』があります。値段が高い本でしたが、結局最終的には読まずに処分してしまったのです。その時点では、自分にとって価値のあるものに思えなかった。

 ところが、時が経ち、今再び同書にたどり着きました。今度は、教授に薦められたわけではなく、自分が心の底から「読みたい」と感じて購入したのです。そのため、届いた瞬間から読み始めました。

 訳者は加藤秀俊さん。明倫館の集団指導で採用している『新中学問題集発展編』の中に『独学のすすめ』があり、読んで興味が出て文庫を購入し、一読していたのです。そうなると親近感もわき、より一層本に巡り会えてよかったなと思えるのです。以前は訳者がどうだとか、全く関心もなかった。

 そういった意味で、人生においてタイミングというものは存在すると思います。生かすも殺すも自分次第なのですが、積み重ねている人ほど、そのタイミングというのは訪れやすくなるのではないでしょうか。私もそういったタイミングがたくさん訪れるような人間になっていきたいと思っています。

 今では上下巻になっていて、より高くなってしまった…。昔、大学の教授が言っていましたが、「欲しい本が手に入るタイミングにいたら、買っておくべきだ。あとから必要になったとしても手遅れになることがあるから」とのことでした。私の場合は一度手放してしまったバージョンが絶版となってしまいましたが、新しいバージョンがまだ残っていたので救われました。